「昔はもっと指が動いたのに…」
「弾きたい曲に指がついていかない」
そんな悩みは、才能ではなく“準備不足”が原因かもしれません。
『全訳ハノンピアノ教本』(全音楽譜出版社/平尾妙子訳)の1〜5番は、指の動き・独立性・バランスを整えるための基本練習。
毎日10分だけでも、確実に指の基礎力が育ちます。
本記事では、ハノンの練習ポイントや飽きずに続ける工夫、心に響く言葉まで紹介します。


練習方法のポイント|毎日10分で指の基礎力を育てる
ハノン1〜5番は、毎日10分間の練習で十分な成果が期待できる基礎トレーニングです。
短時間でも、目的を意識して丁寧に取り組むことで、指の動き・独立性・左右バランスが自然に整っていきます。
まずは、ハノン1〜5番の練習から始めましょう。以下のポイントを意識すると、効果的に指の基礎力が育ちます。
- テンポは♩=60程度からスタート。無理なく弾ける速さで、焦らず丁寧に
- 片手ずつ練習し、指番号を意識して均等な動きを目指す
- どの指でも音がはっきり聞こえるように、タッチの強さを揃える
- メトロノームを使ってリズムの安定を図る
- 慣れてきたら両手で弾き、音の粒をそろえる練習へ移行
- 1番だけでも効果あり。余裕があれば2〜5番をローテーションで取り入れる
💡「毎日10分だけ」と決めて取り組むことで、習慣化しやすく、指の基礎力が着実に育ちます
練習方法のアレンジ|飽きずに続ける工夫と応用力アップ
ハノンの練習は、毎日同じことを繰り返すだけでは単調になりがちです。
そこで、日替わりで変化をつけることで、飽きずに継続しやすくなり、指の反応力や表現力も高まります。
🔶アレンジ例
ハ長調の音階・アルペジオを取り入れる
ハ長調のスケール(音階)やアルペジオ(分散和音)をゆっくり弾くことで、指の動きと音感の連携が強化されます。
ハノン教本の中盤以降には、長調・短調の音階やアルペジオが多数掲載されていますが、まずは一番簡単なハ長調から始めるのが理想的です。
白鍵のみで構成されているため、指の動きに集中しやすく、初心者や再スタート世代にも取り組みやすい内容です。
テンポを日替わりで調整する
今日は♩=60、明日は♩=72など、少しずつテンポを変えることで、指のコントロール力が育ちます。
速さにこだわるよりも、音の粒・リズム・タッチの均一性を保つことが最優先です。
変奏リズムで弾く
スタッカート、レガート、付点リズム、三連符などを日替わりで取り入れると、指の柔軟性と反応力が鍛えられます。
ハノン教本には22種類の変奏リズムが掲載されており、簡単なものから難しいものまで幅広く選べます。
自分のレベルに合ったものを選び、日替わりで少しずつ取り入れるのがおすすめです。
ハノンの言葉に励まされるとき
ハノンの「はじめに」には、平尾妙子さん訳でこう記されています:
「5本の指をみな平均して訓練すれば、ピアノのために書かれた曲は何でも弾くことが可能になるはずです」
地道な基礎練習が、弾きたい曲につながるという確信。
それを、これほど簡潔に伝えてくれる言葉は他にありません。
ハノンの練習目標(平尾訳より)
- 指を動きやすくすること
- 指をそれぞれ独立させること
- 指の力をつけること
- 音の粒をそろえること
- 手首を柔らかくすること などなど…
これらの目標は、約1年しかピアノを習っていない人でも、ハノンを続けることで着実に達成できると書かれています。
単調に感じるときこそ、読み返す価値
ハノンは単調で、退屈に感じることもあります。
「つまらないな…」と思う日もあります。
でもそんなときこそ、この“はじめに”の言葉を読み返すと、士気が上がります。
「この練習が、弾きたい曲につながっている」
そう思えるだけで、今日の10分が意味ある時間になります。
まとめ
ハノンは、指の基礎力を育てる“土台づくり”の練習法です。
毎日10分でも続けることで、指の動きが安定し、演奏の幅が自然と広がっていきます。
焦らず、無理せず、楽しみながら取り組むことが、長く続けるコツです。
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